
弁護士コラム「 恐怖?!の自転車」
2023.11

1 今回は、今までのコラムとは少し趣向を変えて、自転車のお話です。自転車は、とても身近で便利な乗り物として、通勤や移動に活用されている方もたくさんいらっしゃると思います。
その反面、自転車の危険性や運転マナーが問題となることや、実際に危険な運転や迷惑な運転を目の当たりにすることも増えており、今年(2023年)の4月からはヘルメットの着用が努力義務化されるなど規制も年々厳しくなっています。
2 自転車が「危険」になった大きな要因として、自転車の性能が格段に向上したことがあるように思います。電動アシスト機能や素材の軽量化などによって、昨今の自転車は一昔前の「ママチャリ」とは別の乗り物といえるほどの進化を遂げました。全力で立ちこぎをする鍛錬からは解放され、同じ目的地には以前よりも短い時間で到着できるようになりました。いつしかそれが当たり前になり、知らず知らずのうちにスピードが出てしまうのかもしれません。
3 性能や速度は「原付」(スクーターなどの排気量50㏄以下のバイク)にも劣らない一方で、その中には都合よく「歩行者」に変身してしまう自転車もいます。
例えば、車道を走っていたのに前方の信号が赤になるや歩道に乗り上げ、歩行者の間をすり抜けて信号を通過し、悠然と車道に復帰していく自転車です。自転車が歩道に進入すること自体は違法ではない(ただし、歩行者専用道路であれば進入自体が違法となります)のですが、歩道では徐行しなければならないため、歩道を走行する速度によっては道路交通法に違反することになります。
また、歩行者との接触事故だけでなく、歩道と車道の段差で転倒したり、そこに後続の自動車や自転車が衝突してきたりといった事故も起きているようです。
4 さらには、ときどき変身するのではなく、そもそも「歩行者」になり切ってしまっている自転車もいます。例えば、「とまれ」(車両一時停止)の標識を無視する自転車です。「自分は歩行者と同じであって車両ではないので一時停止の必要はない」、おそらくそのような意識なのだと思いますが、自転車も「車両」です。停止線で停止することなく十字路等に進入していって出合い頭に衝突するという事故は、自転車事故として最も多い類型なのだそうです。
5 自らの交通違反によって事故を起こしてしまった場合は、それ相応の法的責任が待ち受けています。
まず、刑事上の責任として、道路交通法や刑法といった法律に規定されている刑罰が科されるおそれがあります。比較的軽微なイメージのある「罰金」であっても刑罰の一種であるため、罰金を納めたということになると「前科一犯」となります。
また、民事上の責任として、損害賠償義務を負う可能性があります。賠償義務の有無やその額は事故の状況や双方の過失割合によって変わってきますが、自らの交通違反となれば少なくとも8割方の責任を負うことになると思います。さらに、お相手が亡くなったり、後遺症が残って将来得られたはずの収入を失ってしまったりということになれば、賠償額が数千万円から億単位に及ぶこともあり得ます(なお、東京都では令和2年4月1日から自転車保険への加入が義務化されています)。
6 排ガス規制との兼合いにより、「原付」(排気量50㏄以下のバイク)が2025年以降徐々に姿を消していくと言われています。その分、「エコ」な自転車への需要はますます上がり、今後も進化を遂げていくことになるでしょう。数年後には「一昔前の電動アシストとは比べものにならない」ような自転車が普及しているのかもしれません。
未来の性能に思いを馳せつつ、性能だけでなく意識も進化させたいところです。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
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