弁護士コラム「 債務整理③(借金を「消す」方法)」

2024.2

 今回は、借金のお話第3弾、借金を「消す」方法について見ていきたいと思います。と言いましても、魔法でも違法でもない、あくまでも合法的な手段です、念のため。
 主な方法としては、5つ考えられます(どの方法が適切かはご事情に応じた専門的な判断となりますので、専門家にご相談ください)。

 1つ目は、「支払う」です。当然のことながら、全額を支払えば借金はなくなります。
 しかし、「払っても払っても元本が減らない…」というのが実際で、なかなか簡単ではありません。

 2つ目は、「時効の完成」です。原則として、最後に返済をした日から5年間、新たな借入れも返済もせず、債権者から訴訟や支払督促といった法的手段をとられることもなければ、時効が完成します。そして、時効を援用(時効の成立により債務が消滅したと主張すること)することで残高全額についての支払義務を免れることになります(ただし、時効に関する法律の改正があったため、いつ、誰から借り入れたかによって時効期間が異なります。詳しくは専門家にご相談ください)。
 一切支払わずにいるだけで借金が消える、という点では魔法のような響きに聞こえますが、そう簡単ではありません。
 たとえ少額であっても「返済」になるため、100 円でも返済してしまうとそこから5年間は時効が完成しないことになります。
 例えば、2019年の1月に業者から借入れをし、3月31日までは返済したものの、その後一切返済できなくなってしまった場合、最後の返済である2019年3月31日から5年後の2024年3月30日に時効が完成するはずです。しかし、2024年の3月20日に業者から「苦しいでしょうから1000円でも100円でも良いです」と言われて返済したとすると、目の前に迫っていた時効の完成は返済から5年後の2029年の3月19日まで延びることになります。
 業者も時効期間は当然に把握しているため、時効が完成しないよう手を打ちます。訴訟や支払督促といった法的手続はもちろんのこと、上記のように少しだけでも返済してもらうという手立てもあります。これによって時効期間は一度リセットされ、そこから再び5年間の起算が始まることになります。

 3つ目は、「任意整理」です。これは、弁護士(残高が140万円までであれば司法書士でも対応可)が裁判所の手続を利用せずに貸金業者と直接交渉し、長期の分割払いで支払う旨の合意をする方法を言います。
 支払うことで「消す」という点では1つ目にあげた手段と同じようにも思えますが、任意整理の場合には支払の総額が固定されるという違いがあります。借入れをした際の約定に従って返済をする場合、返済が延びれば延びるほど利息が上乗せされ、頑張って支払ってもほとんどが利息に充当されてしまうということも多くあります。これに対して、任意整理の場合は、和解が成立する時点での借入残高を固定し、その額を36回(3年)から60回(5年)程度の分割で支払うことになります。つまり、支払うそばから(利息によって)残高が増えてしまうということはなく、支払えば確実に残高が減っていきます。これは気持ちの面でも大きなメリットだと言えます。
 なお、任意整理に際して、返済総額自体を減らしてもらえないか(例えば、総額で100 万円ある残高を交渉で 70 万円に減額してもらえないか)というご要望をお伺いすることがありますが、まず無理だと思って頂くほうが良いです。上記のように、和解時以降の利息が発生しないだけでも借主にお得なので、その上さらに減額と言うのは難しいのが現状です。「この額まで減額してくれるのなら一括で返済する」という形であれば場合によっては応じてもらえる可能性はありますが、減額してもらった上で分割払いというは、残念ながらまず応じてもらえません。

 4つ目は、「民事再生」です。任意整理と破産の中間的な制度とも言われますが、仕組みはかなり複雑です。典型的には、「住宅ローンその他の借入れがあり、給与などの定期的な収入から返済しているが、そのまま返済を継続するのは厳しい」というケースにおいて、住宅ローンの支払は継続しつつその他の借入れを減額してもらうことで返済の負担を減らし、自宅を失うことな
く経済的な再生を図るというものです(既に分かりづらいですね…)。
 「自宅を失わずに済む」というのがポイントなのですが、制度がとても複雑なため、あまり浸透していないというのが実情です。

 5つ目は、「破産」となります。破産というのは法律上認められた制度であり、決して「悪いこと」ではないのですが、そのことばの響きから「知りたいけどなかなか聞けない…」ということも多いかもしれません。
 そのため、次回改めてお話しできればと思います。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士

武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。

https://asunokaze-law.com

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