弁護士コラム「 捕まるとどうなる?(刑事手続)」

2024.4

 今回は「捕まった後の世界」を垣間見てみましょう。あくまでも「雑談」です。決して、そのうち役に立つかも…という趣旨ではありません。非常勤講師を務めている大学1年生の授業で使用した小説風の教材を一部抜粋・修正してお届けします。

次の文章は、窃盗(万引き)の容疑で捕まったAさん(21歳)が勾留中にノートに書き留めたものです。( )にあてはまる語句を考えてみましょう。

 あれからもうかれこれ2か月くらい経ったことになる…。こうして留置場や①(a拘置所 b少年鑑別所)で無機質な塀や柵に囲まれて過ごす日々は、永遠ともいえる絶望的な長さだ。
 今年の1月22日、行き慣れた近所のスーパーに行き、特に欲しい物もないので何も買わずに店から出たところで、突然呼び止められた。「お金払わないでバッグに入れちゃダメよ。ちょっと事務所までお願いできるかな」。声の主は見知らぬ中年の女性だった。前にテレビで見たことのあった『万引きGメン』そのものだったが、私には万引きをした覚えなどなく、バッグに商品が入っている筈もなかった。しかし、私のバッグには何故か、板チョコが2枚…。
  スーパーの事務所に行くと、中年の男性が椅子に腰かけ、腕時計を見ながら激しく貧乏ゆすりをしていた。私を見るなり、「あなたね、万引きだって立派な犯罪なんだから。これから警察に来てもらうからね。」とせっかちそうに早口でまくし立てた。ほどなくして警察官が入ってきた。警察官は私を制するように「詳しい話は署で伺いますので。お手数ですが署までご同行願います」と言い、私は事務所の裏口から外に出て、そこに停めてあったパトカーに乗せられた。                          最寄りの警察署に着き、写真を撮られたりした後、狭い部屋に通された。取調室だろうか…。刑事らしきスーツ姿の男性が机を挟んだ椅子に腰を下ろし、「言いたくないことは言わなくても良いから」と言ってきた。②(a 黙秘権 b証言拒絶権)の告知というやつだろうか…。しかし、言い終わるや否や、「でもさ、悪いこと言わないけど、バッグにチョコレート入れといてやってませんは通らないよ。あなたも子供じゃないんだからわかるでしょ。」と一転して投げやりな口調で畳みかけてきた。「あの…認めないと帰れないのでしょうか…」と聞いてみたところ、「帰りたいから帰るって、あなた逮捕されてんだからさ、お願いしますよっ!」と妙に馴れ
馴れしい感じで、しかもとんでもないことを言ってきた。「た、逮捕?」、「そう、逮捕。お店の事務所に連れられて行ったでしょ、あの時点で現行犯逮捕されたの」、「そんなバカな…」、「バカだと思うなら弁護士呼んで聞いてみなよ、当番弁護士っていうのがあるからさ。」…ということで、気づいたら私は警察に逮捕され弁護士を呼ぶ③(a被疑者 b被告人)ということになってしまっていたのだ。
 1月23日(2日目)
翌日も取調室に呼ばれた。さすがに殴られるようなことや、「かつ丼食うか?」みたいな「昭和の刑事ドラマ」的なやり取りはなかったが、「とぼけたってねぇ、証拠あるんだし…」とプレッシャーをかけられたり、「弁護士つけたんだし、弁護士に示談してもらって終わりにしようよ。否認したってあんたにゃ何の得もないんだから」などとしつこく言われた。
 1月24日(3日目)
次の日は、「今日はお出かけだぞ」といって起こされた。④(a検察庁 b現場検証)に行くのだそうだ。街中でたまに見かける窓に鉄格子のついた「青と白のバス」にまさか自分が乗ることになるとは…。
 1月25日(4日目)
この日は⑤(a裁判所 b現場検証)だそうで、また青と白のバスに乗せられた。行った先で、10日間は家に帰れない、家族とか職場とか誰か一人に連絡できるがどうする?と聞かれ、とりあえず親のケータイを言った。10日か…。感覚もマヒしてきて、なんだかどうでもよくなってきた。                                                 1月26日(5日目)
昼過ぎに、両親がそろって面会に来てくれた。とても心配してくれていて、ありがたいやら申し訳ないやら…。それにしても⑥(aタオル b現金)は差入れできないとはおどろきだ…。
 1月27日、1月28日(6日目、7日目)
取り調べもなく、面会もなく(世間では土日で、土日は弁護士以外面会できないそうだ)、ヒマすぎて頭がおかしくなりそうだ…<以下、省略>

 ちなみに、正解は①から⑥まですべてaです。学生からは「捕まっているのに現金って…何に使うの?」という反応が一番大きかったように思いますが、タオル(自殺防止のため差入れできない)など身体拘束中であっても必要となるのに差入れができない物は中で購入することになります。そのため、現金の差入れというのは実はとても貴重なのです。…あくまでも雑談です。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士

武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。

https://asunokaze-law.com

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