弁護士コラム「多様化する成年後見制度」

2026.3

 年が明け、年度末に向けたこの時期(1月から3月)は、各所で成年後見に関する講演・学習会や専門職団体間での会議・意見交換会が多く開催されます。
 司法書士や社会福祉士など他職種の後見業務に関するお話はとても興味深く、また多くの刺激を受ける機会にもなります。

 ところで、「専門職後見人」というのは、何が専門なのでしょうか。一見すると後見業務の専門家のように思えますし、たしかに多くの専門職後見人は後見業務にとても精通していらっしゃいます。
 しかし、後見業務のみを専門的に取り扱うという業務形態はあまり多くはなく、多くの専門職は他の業務と並行して後見業務にも取り組んでいるというのが実情です。
 換言しますと、専門職後見人というのは、弁護士、司法書士、社会福祉士などそれぞれの分野の専門家がその専門性を活かして後見人を務める場合を意味するものと言えます。

 例えば弁護士の場合、その職務は多岐にわたるものの、交渉・調停などの話合いや、訴訟などの法的手続において最も強みを発揮できるといえます。そのため、成年後見の分野においても、親族間に意見の対立があるケース、虐待が疑われるケース、ご本人の財産を取り戻す必要があるケース、相続で揉めているケース、賃貸物件の管理等権利関係が複雑となるケースなど、紛争性や複雑性のあるケースでは弁護士が後見人としてその専門性を活かすのが適切といえます。
 他方、後見人としてお預かりする財産には不動産が含まれることも多いため(特に高齢者の場合)、不動産の取扱いが課題となるようなケースでは登記をはじめ日常的に不動産の取扱いがある司法書士が適任と言えるでしょうし、身上面での課題が多い場合には福祉の専門家である社会福祉士が適していると言えるでしょう。

 もっとも、近時は一概に「これが課題」と切り離せないような複合的な課題を抱えていらっしゃるケースや、「80・50問題」にも象徴されるようなご家族も含めた重層的な課題を抱えていらっしゃるケースも増えてきており、「このケースではこの専門職」と単純に割り切れなくなってきています。そのような状況に対応すべく、後見人の形態にもさまざまな実践がなされるようになっています。
 代表的なのは、「共同後見制度」です。例えば、財産の管理は専門職後見人、身上面は親族後見人というように、複数の後見人が選任されてそれぞれ役割を分担しながら後見業務を遂行するようなケースです。
 これによって、複数の課題に対して、それぞれの課題に適した複数の後見人が対応できるようになります。
 また、「リレー方式」という類型もあります。これは、当初の課題(相続手続が必要、施設の入所契約が必要など)を専門職が解決した後に、親族後見人や市民後見人に引継ぎをするものです。成年後見制度の利用件数は近年とても多くなってきており、専門職だけでは担いきれないというのが実情であること、ご本人にとって身近な存在に感じられる存在であることなどから、特に市民後見人に対する期待が高まっているところです。

 さらには、早ければ今年(2026年)の12月ころと言われていますが、成年後見制度自体が大きく変わることになりそうです(法改正が進められています)。
 現行の成年後見人には、包括的な代理権が与えられ場合によってはご本人の意思に反した決定すらできてしまったり、一度後見人がつくと外れてもらうことができないといった「使い勝手の悪さ」が指摘されているところです。
 上記の法改正ではこの点に焦点をあて、特定の課題ごとに、その課題が解決するまでの一定期間に限った形で後見人が選任されるようなシステムに変わるとされています。
 ただし、紛争案件での対応など、包括的な代理権を持っているからこそ対応できたこともあるため、上記の法改正は必ずしも歓迎すべきことだけではないのではないかとの指摘もあります。今後の動きに注目していきたいと思います。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士

武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。

https://asunokaze-law.com

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