弁護士コラム「 捕まるとどうなる?②(Aさんのその後)」

2024.8

  前回まで信託の難しい話題が続いたので、今回は少し息抜きに、以前のコラム(コラム「捕まるとどうなる?(刑事手続)」2024.4)で小説風にお話した刑事手続について、その後の裁判手続も含めてお話してみようと思います。よろしければコラム「捕まるとどうなる?(刑事手続)」も合わせてご覧頂ければ幸いです。

  逮捕されると留置場に閉じ込められしばらく家に帰れない、というイメージがおありかもしれませんが、法律上は逮捕の効力は最大で48時間までとなっています。
 「警察24時」などの番組に出てくる逮捕のシーンで警察官が必ず時計を読み上げているのは、この48時間の起算時刻を明らかにしておくためなのです。

  逮捕には、逮捕状に基づく通常逮捕の他、緊急逮捕や現行犯逮捕というものもあります。現行犯逮捕は、一定の要件を満たせば私人でもできます。「万引きGメン」が犯人を事務所まで連れて行く(行ける)のは、まさにこの私人逮捕によるものです。

  逮捕の効力が48時間までであるにもかかわらず「しばらく家に帰れない」のは、逮捕に引き続いて身体を拘束できる法的根拠が存在するからです。逮捕の後には送検・勾留請求(送検されてから24時間以内)といった手続が続き、その後に「勾留」の裁判がなされることになります。勾留の裁判がなされると、基本的に10日間(逮捕から通算して13日間)は家に帰れないことになります。

  勾留の10日間のうちに、検察官は警察から引き継いだ捜査資料を確認したり、必要に応じて追加の捜査を指示したりします。その上で自らも取調べをして、最終的に被疑者を起訴するか否か判断します。起訴されれば裁判となります。起訴されない場合は「起訴猶予」と言い、前科はつきませんが、起訴猶予となった旨の記録(「前歴」と呼ばれます)は残ります。

  被疑者の立場からすると、勾留されると国選弁護人の選任を請求することができたり、家族や同僚といった弁護人以外の人との面会が可能となったりします。
 なお、勾留前であっても「弁護士を呼ぶ」ことはできます。これは「当番弁護士」という制度で、誰でも1回は無料で弁護士を呼んで法的アドバイスを得たりすることができます(弁護士の日当は弁護士会の予算で賄っています)。

  実は、勾留が10日間だけでは終わらないこともあります。法律上は最大で10日間、勾留を延長することができるとされているからです。
 10日間の延長が認められたとすると、家に帰れない期間は逮捕から通算して23日間にも及ぶことになります。さすがに職場等にも「ちょっと体調が…」とごまかせる期間ではなく、かといって正直に事情を話しても理解してもらえるとも限りません。そのため、「一層のこと罪を認めて示談すれば帰れる」という誘惑に負けてしまう人や、「裁判のときにやっぱり無実だと訂正すれば良いだろう」と考えてしまう人が出てきます。しかし、罪を認めてその旨の書類(調書)が作成されてしまうと、後の裁判でその内容を覆すことはまず不可能と言えるため、まさに正念場となります。

  起訴された後、万引き(窃盗罪)であれば1か月から1か月半程度で第1回の裁判期日となります。
 裁判の手続は、罪を認めていて争いがないケースであれば、殺人などの重大犯罪を除き、基本的に1回の期日で裁判は終了します。罪を否認しているケースであれば、証人尋問など数回の期日を経て判決を迎えることとなります(なお、殺人罪などの重大犯罪であれば、罪を認めているか否かにかかわらず裁判員裁判によることになります)。

  「法廷もの」の映画やドラマにありがちな、裁判官が木槌をトントンとして「静粛に」と言う姿は、民事裁判、刑事裁判を問わず、日本の法廷でお目にかかることはできません(外国の法廷の光景を模しているのだと思われますが、実は諸外国でも一般的な光景とは言えないようです)。
 日本の法廷は、裁判官が制さずとも、基本的にとても静かです。稀に、被告人などが暴れたりすることもあるようですが、そのような事態になればもはや木槌どころではなく、実際にも裁判長が退廷を命じることで対処しているようです。

  裁判の結果言い渡される判決については、犯罪によってある程度の重さが決まっています。万引きであれば、初回は起訴猶予(さらには、送検すらされない「微罪処分」ということもあり得ます。これも「前歴」の一種となります)、2回目だと罰金、3回目あたりから法廷での裁判となり、まずは執行猶予付きの懲役、そして4回目以降は実刑といったような段階を踏んでいくと言われています。

10  コラム⑨に登場したAさんは勾留されていましたが、万引きを否認しているから勾留されているという可能性がある(前科があるから勾留されているとは限らない)ため、前科の有無までは分かりません。
 ただ、前科の有無にかかわらず、嫌疑が不十分ということになればそもそも起訴されず、起訴猶予となって釈放されることになると考えられます。
 他方、ひとたび起訴されてしまうと、起訴は検察官に十分な証拠や「勝算」があることの表われとも言えるため、最後まで否認を貫いたとしてもかなり高い確率(「99.9」は少し大げさで、98%くらいと言われています)で有罪となってしまうのが現実です。
 有罪となれば、前科の有無や回数によっても刑の重さが異なってくることになります。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士

武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。

https://asunokaze-law.com

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