
弁護士コラム「相続のおはなし①」
2025.7
昨年(2024 年)4月から相続登記が義務化されました。相続が発生したものの登記名義はそのままという状態ですと現在の所有者が分からず、建物倒壊のおそれなどが生じても誰に連絡をしてよいのか分からないという問題が生じます。このような背景事情から、相続によって不動産を取得した場合は3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととし、違反した場合には過料の対象となりました。
相続登記の義務化をきっかけとして、登記名義の変更手続だけでなく、そもそも誰の名義に変更するのかで改めて相続の問題に直面し、ご相談にいらっしゃる方がこの1年でかなり増えている印象です。
そこで、今回から何回か(予定では3回)にわたって相続のお話をしていこうと思います。第1回は、法定相続人と法定相続分です。
1 相続人となる人は、①配偶者、②子、③親(直系尊属)、そして④兄弟姉妹です。
ただし、この全員が最初から相続人となるわけではありません。②子、③親、④兄弟姉妹は、それぞれ前の番号の人がいない場合にはじめて相続人となります。すなわち、③親(直系尊属)は②子がいないとき、④兄弟姉妹は②子も③親もいないときにはじめて相続人になるのです。
2 他方、①配偶者は常に相続人となります。ただし、戸籍上の配偶者に限られます。従って、入籍していない「事実婚」の夫婦間では相続は発生しません。昨今では夫婦別姓のためにあえて入籍しない夫婦も増えていますが、長年夫婦としての実態があるにもかかわらず入籍していないというだけで相続できないことになってしまうのです。また、離婚後の夫婦間でも相続は発生しません。
3 配偶者が戸籍上の配偶者に限られるのとは違い、「子」には特に限定はありません。
入籍している夫婦間の子はもちろん、「事実婚」の夫婦間の子、離婚した夫婦間の子など、「子」であれば相続人となることができます。
かつては、入籍していない男女間に生まれた子は、入籍している夫婦間に生まれた子の半分しか相続分が認められていませんでした(例えば、入籍している夫婦間の子をAさん、離婚した以前の配偶者との間の子をBさんとした場合、AさんとBさんは2分の1ずつではなく、Aさんが3分の2、Bさんが3分の1の割合で相続をすることになっていました)。
しかし、これでは「法の下の平等」に反するということになり、10年ほど前に最高裁で憲法違反の判断がなされました。そのため、現在では上記のような区別はなくなりました。
4 次に、相続分についてですが、実は「他に誰が相続人になるか」によって異なってきます。
たとえば、配偶者の相続分は「半分」と記憶している方もいらっしゃるかもしれませんが、これは配偶者と子が相続人である場合の割合になります。すなわち、配偶者と子が相続人の場合、それぞれの相続分は2分の1ずつとなります。子どもが複数いれば2分の1をさらに子どもの人数で割った割合がそれぞれの子どもの相続分になります(たとえば子どもが2人いれば、それぞれの子どもの相続分は2分の1をさらに2人で割った4分の1ずつになります)。
これに対して、配偶者と親(直系尊属)が相続人の場合は2分の1ずつではなく、配偶者が3分の2、親(直系尊属)が3分の1となります。さらに、配偶者と兄弟姉妹が相続人であれば、配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1となります。
5 法定相続人と法定相続分の概要は上記の通りですが、実は、このような規定に従わなければいけないというわけではありません。
遺言を残したり、相続人の間で話し合ったり(遺産分割協議)することにより、法定相続人ではない人に財産を遺したり、法定相続分とは異なる割合で相続をしたりすることもできるのです。
…ということで、次回に続きます。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
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