
弁護士コラム「離婚後共同親権」
2026.1
1 2026年4月1日から改正道路交通法が施行され、自転車での交通違反に対する罰則が強化されます。すでにかなり報道や周知がなされているので、ご存じの方も多いと思います。もっとも、中には都市部の道路事情(道幅が狭い上、道路端に駐停車している自動車が多いなど)に合わない規制もあり(「自転車は車道を通行する」という規則をどこまで遵守すればよいのか…)、実際の運用が注目されるところです。
2 さて、2026年4月1日から施行されるものとしては、他にも離婚後共同親権(改正民法)があります。
現行の制度は、父母の婚姻中は共同親権、離婚後は父母どちらかの単独親権(離婚の際、協議または家庭裁判所の審判によって親権者を定める)となっています。
これに対し、2026年4月1日から施行される法律では、離婚後の親権者を定める際、父母どちらかの単独親権に加えて、離婚後も父母が共同して親権を行使するという形態を選択することができるようになります。すなわち、すべてのケースで例外なく必ず共同親権となるのではなく、選択肢が一つ増えるという形での改正ということになります。
3 ところで、「そもそも親権って何?」という疑問がおありかもしれません。
親権の内容は、未成年の子を養育・監護する監護権と、未成年の子の財産を代わりに管理する財産管理権が中心とされています。「親としての権利」とも読めてしまいますが、権利ではなく未成年の子のために行使すべき親としての権限、さらに言えば権利ではなく義務という捉え方のほうが適切だろうと思います。
なお、民法上の成人が18歳とされたことにより、親権は子どもが満18歳となった時点で、特に必要な手続等もなく当然に消滅します。
4 現行の制度が離婚後単独親権となっているのは、離婚後は父母の間で連絡が取りづらいことが想定され、それにもかかわらず共同親権としてしまうと子に関する意思決定に支障を来してしまう(親権を行使すべき場面でも行使できなくなってしまう)といった状況にかんがみてのことだとされています。
他方、離婚後単独親権の制度では、どちらが親権者となるかの父母のもめ事に子どもが巻き込まれてしまう、非親権者と子どもとの交流の機会(面会交流)をどのように持つかでも揉めてしまう、多くのケースでは母が親権者となり父が養育費を負担する形になるため、親権がないのに養育費の負担だけ負わされることで養育費の支払が滞りがちになる、などといったデメリットも指摘されています。
5 これに対して、離婚後共同親権であれば、親権者や面会交流の点でもめる必要がなくなり、また、父母がともに親権者となるため養育費の負担だけを負わされるということもなくなるなどと言われています。
他方、デメリットの指摘も少なくありません。制度上は離婚後共同親権も選択することができるという建前になっていますが、DVやモラハラが原因で離婚に至ったケースにおいては離婚後共同親権とするよう事実上強制されてしまうおそれがあります。また、子どもへの虐待から逃れるために離婚に至ったケースにおいても、離婚後も共同親権とされ、親権の行使という大義名分の下に虐待が継続してしまうおそれが考えられます。
もちろん、制度上もそのようなケースへの配慮はなされており、父または母が子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときや、父母が共同して親権を行使することが困難であると認められるときは離婚後共同親権を選択することはできず単独親権としなければならないものとされています。
しかし、これらのケースに該当するかどうかは裁判所が判断するものとされているため、裁判所の判断にあたって不利となる証拠を提出させないようにするなどのおそれは残ります。
6 そもそも、現行の制度においても、養育費がきちんと支払われたり、離婚後も父母が話し合って進学先など子に関する意思決定をしたりすることは可能であり、そのようなケースではそもそも離婚後共同親権の制度は不要と言えます。他方、離婚後共同親権としたところで、なかなか上手くいかないというケースももちろん想定されます(上手くいくのならそもそも離婚しないはず、という指摘もあります)。
7 とはいえ、実際に施行されてみないと分からない部分も多いと思いますので、道路交通法と同様、施行後の状況が注目されます。
年頭からあまり明るくないお話になってしまいましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
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