
弁護士コラム「 債務整理②(「過払金」のしくみ)」
2024.1

1 今回は、借金についてのお話第2回、テーマは「過払金」です。
過払金という単語は、テレビのCMやインターネットの広告で一度は目にしたことがおありだと思います。
もっとも、「まずはご相談を!」という電話番号ばかりが耳に残り、「実際のところ過払金って何なの?」という疑問を抱いている方も多いかもしれません。
2 過払金とは、貸金業者(主に消費者金融)に返済しすぎたお金(利息)のことです。
お金を貸す際の利息について定めたものとして、利息制限法と出資法の2つの法律があります。15年ほど前まではそれぞれの法律に規定されている利息の上限が、利息制限法においては20%、出資法においては29.2%と異なっていました(現在は出資法が改正され、違いは解消されました)。
例えば、100 万円を借りて1年後に返済する場合の利息は、利息制限法によれば200,000 円、出資法によれば292,000円となります。実際には分割での返済だったり、借りたり返したりを繰り返すので、利息の差額もさらに大きくなることになります。
3 貸金業者が個人に貸付けをする際には原則として利息制限法に従う必要があるのですが、例外的に利息制限法の上限をオーバーしても有効となるケースもありました。また、利息制限法に違反しても罰則はないのに対し、出資法には違反した際の罰則が定められています。
そこで、貸金業者は、利息制限法の上限はオーバーしつつ出資法の上限には違反しない金利(これが「グレーゾーン金利」と呼ばれたものです)で貸付をしていました。
利息制限法の上限をオーバーした利息は、上記のように例外的な場合を除いて本来支払う必要はありません。しかし、毎月の返済額には利息も組み込まれてしまっているため、返すほうは気づかないまま、実際には利息を払いすぎてしまっていた…ということになります。これが過払金のしくみです。
4 転機となったのは、平成18年の最高裁判所判例です。同判例は、「例外的に利息制限法の上限をオーバーしても有効となるケース」を厳格に解釈し、事実上グレーゾーン金利を認めないとの判断を示しました。
これによって、それまでは利息制限法の上限をオーバーしていても有効だったり無効だったりしたものが、「利息制限法の上限をオーバーしているから無効」と明確になり、無効となるのならその分は返してもらおうという過払金の返還請求につながっていきました(なお、上記の出資法の改正もこの判例を受けたものです)。
5 貸金業者は、昭和の頃には「サラ金」と呼ばれていました。当時の利用者がほとんどサラリーマンだったことから「サラリーマン金融」と呼ばれたそうです。
平成になるとATMのような機械で誰にも会わずに借りられるようになったり、消費者金融のCMが大々的に流れるようになったりして、「サラ金」の暗いイメージは払拭され、利用者も幅広くなっていきました。
過払金のCMに力を入れている事務所は、当時の利用者の数からすれば、まだまだ過払金の請求をしていない人が多いはずだと考えているのだと思います。
しかし、過払金の返還請求権は、最後に利息を返済したときから10年で時効となります。過払金返還のきっかけとなった最高裁判例からかれこれ20年近く経つことを考えると、仮に当時利息を払いすぎていたとしても、時効期間との関係でもはや返してもらえる可能性は低いと言えます。
6 その上、そもそも過払金が生じている可能性が低いケースもあります。
例えば、上記の最高裁判例以降は利息制限法に従った利率での貸付がなされるようになったため、ここ10年以内に借りたものに過払金が生じることはまずないと言えます。
また、「グレーゾーン金利」で貸付をしていたのは消費者金融やクレジット会社のキャッシングサービスであり、銀行のカードローンの利息や、クレジットカードでお買い物をした際の分割払いの利息にはそもそも過払金は生じていないと考えられます。
ただし、個別のご事情にはよります。「かれこれ20年くらいずっと返済を続けている」というような方であれば、一度専門家にご相談になってみても良いと思います。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
