
弁護士コラム「後見報酬の今までとこれから」

2025.1
皆さま良いお年をお迎えのことと存じます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本年の話題や注目はさまざまだと思いますが、成年後見の関係では本年(2025年)4月から後見報酬の算定方法が変わるという点に大きな注目が集まっています。変更の「目玉」は、後見人等としてどのような意思決定支援を行ったかが報酬算定の対象とされるようになるという点です。
そこで、今回は後見報酬についてお話してみようと思います。なお、本コラムでは、以前に「後見と信託」と題し、3回にわたってお話をさせていただいておりますので、よろしければ併せてご覧ください。
1 現在(2025年3月まで)の後見報酬は、すべてのケースに共通する「基礎報酬」と、ケースごとに異なる「付加報酬」によって構成されています。基礎報酬は「固定給」、付加報酬は「歩合給」というイメージです。それぞれについてもう少し詳しく見てみましょう。
2 「基礎報酬」というのは、本来の後見業務に対する報酬です。施設費や入院費などの各種支払い、リネンのレンタル会社や在宅サービス事業所との契約などといった通常想定される後見人としての業務は基本的に「基礎報酬」の対象となります。ただし、通常想定される業務量をはるかにこえるような事情があれば付加報酬の対象となる可能性はあります。
他方、何もしなかったとしても基礎報酬が付与されないということはありません(解任されるおそれはありますが…)。気になる報酬額ですが、ご本人の資産によって異なります。おおよその基準ではありますが、ご本人の資産が1,000万円未満であれば月額2万円程度、1,000 万円から 5,000 万円程度であれば月額3~4万円、5,000 万円以上であれば5~6万円とされています。
換言すると、後見人としての業務量には変わりがなかったとしても、ご本人の資産次第で報酬額が(大きく)異なる可能性があることになります。
3 「付加報酬」というのは、本来の後見業務以外に特別に対応したことに対する報酬です。例えば、「遺産相続に関しての協議や調停に対応した」、「ご本人名義の不動産を売却した」といったような、本来の後見業務ではないものの、後見人という立場で対応したことがあれば、その旨を申告することで「基礎報酬」にプラスして報酬を付与される仕組みになっています
付加報酬の算定は、それによって得られた利益を基準にするものとされており、概ね2万円程度から、最大で基礎報酬の50%とされています。ただし、「思ったほど付加されない」というのが個人的な感覚(ただの愚痴?)です。
4 上記のように、現在の報酬算定方法は、➀ご本人の資産次第で報酬が異なってしまい、資産のある方のご負担が一方的に大きくなってしまう、②後見人として何もしなかったとしても「基礎報酬」が付与されてしまうといった問題点が指摘されていました。
そこで、今年4月からは、➀ご本人の資産に応じて基礎報酬の額が変わる算定方法を廃止し、②後見人として何をしたかによって報酬額が異なるような算定方法に変わります。そして、②(「何をしたか」)の中で、後見人としてどのような意思決定支援を行ったか(面会、カンファレンスへの出席、支援者との情報共有など)が考慮されるようになります。
現在では後見人が代わりに行う「代行決定」よりもご本人の意思を尊重する「意思決定支援」が先行すべきとの考えが定着していることから、この考え方を報酬の算定にも反映させたと言うことができます。
もっとも、具体的な報酬の算定方法や目安までは公表されておらず、この点は4月以降徐々に明らかになっていくものと思われます。
5 成年後見制度をめぐっては、報酬の算定方法だけでなくその他にもさまざまな変更が検討されています。「一度決まった後見人は基本的に他の人にチェンジできない」という今までの運用も見直されるようです。あくまでも検討段階ではありますが、今後検討が進めばまた本コラムでご紹介させていただこうと思います。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
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