
弁護士コラム「黙って録音して良いの??」
2026.10
1 AIが凄まじい速さで浸透しています。ふと気づくとそれまで慣れ親しんでいたはずの日常の習慣がいつの間にかAIに取って代わられていた…ということも珍しくなくなりました。
活用の仕方は人により、また、業種によりさまざまだと思いますが、多くの人に共通する身近なAIは、必要な情報の検索機能でしょうか。今までは検索したいワードを入力し、該当するサイトを参照していく…という手順でした。
しかし、AIは複数のサイトを参照し、内容をまとめた上で提示してくれるため、検索の労力と時間が大幅に軽減されることがあります(「勝手にまとめるな!」と思うことも少なくないですが…)。
2 また、「文字起こし」の作業でもAIの活躍を目にすることが多くなりました。書記や議事録担当者が必死にメモを取る光景は既に過去のものとなりつつあります。
そればかりでなく、会議だけではなく一対一での相手との会話も録音しAIに文字起こしをしてもらう機会もあると思います。しかし、ここまでいくと便利さよりも、ここまでして良いの?法に触れていないかしら…と心配になることも多いかもしれません。
3 そこで、録音の状況ごとに、民事上違法(損害賠償請求の対象)となるか、刑事上違法(犯罪)となるかまとめてみようと思います。
- 自分と相手との会話を録音する行為
自分と相手との会話を録音する行為は、基本的に(強制するなど反社会的な手段を用いるのでない限り)民事上も刑事上も違法とはならないとされています。そして、これは相手方が録音に気づいていなかったり同意していなかったりしても同様です(「秘密録音」などと表現されます)。
- 自分以外の人どうし(自分が居合わせていない場)の会話を録音する行為
自分以外の人どうし(自分が居合わせていない場)の会話を、その場にこっそり自分のスマホを置いておくなどして録音することは、民事上違法となる可能性が高いです。このケースを「盗聴」と呼んで「秘密録音」と区別することもあります。また、盗聴行為自体は刑事上違法(犯罪)ともならないとされています(ただし、盗聴行為そのものは犯罪ではないとしても、その前後の行為、例えばスマホを置いておくためにこっそりその場に忍び込むことが住居侵入罪にあたるといった形で犯罪が成立することは多いです)。
なお、犯罪捜査のために捜査機関が通信(電話での会話)を傍受する行為が問題となることもありますが、これは捜査が適法になされているかどうかというまた別次元の問題になります。
4 ここからさらに話がややこしくなるのですが、録音する行為自体と録音したデータの取扱いとは分けて考える必要があります。録音は基本的に自由だとしても、録音したデータは自由に使って良いわけではないので注意が必要です。
「ここだけの話」、「他の人にはナイショのお話」を考えてみるとわかりやすいと思います。当然ですが、会話の相手には知られても良い、むしろ知ってほしいからこそ話をします(知られて困るならそもそも黙っているということになります)。しかし、話したからといってその内容を誰にでも言いふらして良いということにはなりません。録音も同じことで、話している相手であれば良いのですが、それを拡散されるのは困る、ということになります。
録音データを不適切に拡散してしまうと、プライバシー侵害による損害賠償や、場合によっては名誉毀損罪などの犯罪が成立するおそれもあります。
5 裏を返せば、録音データの利用がプライバシーや名誉の侵害にはつながり難い場合、例えば①業務や支援内容の記録として事業所内でのみ共有するような形であれば、録音行為も録音データの利用もまず問題になることはありません。
また、②ハラスメントや犯罪の事実を立証するための証拠として訴訟の場に提出するような行為も原則として違法とはならないということになります。
実際に、録音データは仮にそれが違法な手段で収集されたものだとしても、原則として訴訟の証拠とすることができるとした最高裁判例も存在します。
6 こうしてまとめてみると改めて実に難しい問題だと実感しますが、一言でまとめるとすれば、「行き過ぎないよう気をつけつつ活用する」ということになろうかと思います。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネット元副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
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