
弁護士コラム「相続のおはなし②」
2025.8
前回から始まった相続シリーズの第2回です。今回は、遺言と遺産分割に触れてみたいと思います。
1 前回は法定相続人と法定相続分のお話をしましたが、必ずしも常に法定相続人や法定相続分の規定に従わなければならないわけではなく、法定相続分とは異なる割合で相続をしたり法定相続人ではない人に財産を遺したりすることもできます。
その方法は2つあり、1つは遺言書の作成、もう1つは遺産分割協議(相続人の間での話合い)になります。
それぞれについて少し詳しく見ていきたいと思います。
2 遺産分割というのは、相続の開始後(すなわち、被相続人の他界後)、相続人(遺族)の間で話し合って遺産を分ける方法です。
例えば、4人家族のお父さんが亡くなり、遺産として自宅不動産(評価額3,000 万円)と預貯金(総額1,000 万円)があったとした場合、法定相続分に従えばお母さんが2,000万円分、子ども2人がそれぞれ1,000万円分ずつとなります。しかし、不動産があるためキレイには割れず、自宅不動産を共有の名義にするか売却して代金を分けるかしかなくなり、自宅を売る・売らないで意見が割れることも含めてとても複雑になってしまいます。
これに対して、遺産分割協議がまとまれば、自宅はお母さん、預金は子ども2人で半分ずつ分けるといった相続も可能となります。
3 話合いがまとまった場合は、「遺産分割協議書」という書面を作成し、相続人全員が署名・捺印(実印が必要です)をし、各自の印鑑証明書を添付します。少々面倒ですが、分割協議書があれば不動産登記の名義変更も預貯金の解約手続もスムーズに進みます。
また、遺産分割協議による場合は、誰か 1 人が一切相続しないということも可能です(後で触れるように、ここが遺言との違いになります)。
ただし、揉めてしまうことも少なくなく、揉めてしまうともはや話合いどころではなく、最終的には裁判所の判断(審判)を仰ぐ形になります。
4 相続人(遺族)が揉めないためには、生前に遺言を作成しておくのが有効です。
遺言には①自筆証書遺言、②公正証書遺言があります(③秘密証書遺言というのもありますが、ほとんど利用されていません)。
自筆証書遺言は、自分で書く遺言です。一部(財産目録の部分)は自書(手書き)でなくても良いようになりましたが、基本的には自書が必要です。また、パソコン等での作成が認められている部分(財産目録)もプリントアウトして1枚ずつ署名・押印をすることが必要です。
他人の関与が必要ないため思い立ったときに作成し直せる気楽さはありますが、この時代に手書きというのはなかなか億劫そうです。
5 作成した自筆証書遺言は、封をして自宅や貸金庫に保管しておくか、法務局で保管してもらうこともできます。法務局で保管してもらえれば、勝手に書き換えられてしまったりどこかに紛れてしまうという心配はなくなります。もっとも、保管は有料ですし、また、自分で作成したものを預かってもらうだけですので、せっかく預けた遺言書が実は無効だった…ということのないよう注意が必要です。
6 他方、公正証書遺言は、公証役場に行くか公証人に出張してもらい、公証人に遺言の内容を伝えて公正証書という形式で遺言を作成してもらうものです。完成した遺言は公証役場で保管されるため、勝手に書き換えられてしまうおそれはなく、また、どこかに紛れてしまうということもありません。
もっとも、予約を取って公証人に作成してもらう形となりますし手数料(内容によって額が変わります)もかかるため、いつでも気軽にとはいかないかもしれません。
7 自筆証書、公正証書いずれの遺言であっても、法定相続分と異なる割合で相続させたり、法定相続人以外の人(例えば、孫)に財産を遺すことができます(「遺贈」といいます)。
ただし、法定相続人に予期せぬ不利益が生じないよう、法定相続人は法定相続分の2分の1の割合で自らの権利を主張することができます(「遺留分」といいます)。相続人が妻と子1人である場合、「遺産はすべて子に相続させる」という遺言を作成したとしても、妻は法定相続分(2分の1)の2分の1、すなわち4分の1の割合で遺留分を主張することができます。この遺留分の存在が先に述べた遺産分割協議との違いになります。
8 なお、上記の内容は2025年8月現在のものです。現在、遺言を紙媒体ではなく電子データでも残せるようにするなどさらなる法改正に向けた議論が進められているところです(が、もうしばらくかかりそうな雲行きです)。
次回は、配偶者居住権など2017年に法改正がなされた部分に触れ、合わせて「相続で揉めてしまうケース」をいくつかご紹介できればと思っています。

▼執筆者紹介
明日の風法律事務所 久保田 聡 弁護士
武蔵野市成年後見制度地域連携ネットワーク連絡協議会委員、同市地域自立支援協議会委員、同市高齢者及び障害者虐待防止連絡会議委員、同市障害者差別解消支援地域協議会委員、NPO法人こだまネットもと副理事長など、地域の権利擁護のために奔走中。
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